皆さん、こんにちは!
今年ハセツネに初挑戦という方、記録の更新をねらう方、日々のトレーニングは順調ですか?
今年の日本山岳耐久レースの申し込みが、わずか2日目で満員になってしまったとか。エントリーが間に合わなかった人、残念でしたね。
でも、魅力的なトレイルレースはほかにもたくさんありますし、レースだけでなくフリートレイルランも楽しいですよね。
この安全対策講習会では、もちろん走りのテクニックやトレーニング法なども教えてくれますが、何より特徴的なのが、"安全対策"の講習を受けられる点にあります。
これって、登山好きが集まって作る山岳会が受ける講習と中身が似通っています。
山岳会の講習は、登山中に起きる事故や病気などを想定して、何かあったときに、なんとか生きて帰るための手段を学ぶものです。
安全対策講習会とは、まさに"自立したトレイルランナー"を養成する内容なのですね。
さて、4月末にレポートしました「ハセツネCUPトレイルラン安全対策講習会」の第2回が、5月24日(土)に開催されましたので、引き続きご報告いたします。
田口裕子たぐち・ゆうこ
19歳より登山を始める。何をしてもあまり続かない性格だが、なぜか登山だけは今現在までずーっと続けられている唯一の趣味。体型的にも性格的にも競技には向かないが、ハセツネは完走経験あり。何事も、人の3倍努力して、やっと人並み。運動神経がよく、練習しなくても上位に食い込める女性ランナーたちがうらやましい。しかし最近やっと気づいた。「3倍の努力だから人並み。4倍努力すれば少しは上へ」と。
■日程:2008年5月24日(土) JR武蔵五日市駅前 午前9時集合
■主催:(社)東京都山岳連盟 日本山岳耐久レース委員会
☆第16回日本山岳耐久レース 公式サイトはこちら
■講師:主任講師 田中正人(日本山岳耐久レース初代チャンピオン)
☆田中正人さんが主宰する「チームイーストウインド」オフィシャルサイトはこちら
第2回目は前回より参加者が7名増え、総勢37名で開催されました。
今日は昼ごろから雨の予報。実走講習ではびしょぬれになることが予想されます。
JR武蔵五日市駅に集合後、いったん送迎車で机上講習会場へ。
全員集結! みんなの気合が感じられます
雨が降り出す前に山へ、ということで、送迎車で笹平に向かいます。
まずは前回下ったヨメトリ坂を、市道
(いちみち)山まで登らなければなりません。
今回のコース。笹平から、ヨメトリ坂を登り、市道山の先でハセツネコースに合流し、醍醐丸、生藤山、第1関門の浅間(せんげん)峠へ。ここから上川乗へ下山する
地図をクリックすると拡大します
1回目より人数が増えています
「今回はメモをとりながら走りましょう」と、田中講師から用紙が1枚配られました。1枚の紙に、今回走るコースの地図と、その下に表組みがあります。この表には、区間ごとの標準タイム(=登山用マップに書かれているタイム)と、参考タイム(標準タイム×0.35から0.7まで、0.5刻みに8段階)が書かれており、自分の実走時間を書き込めるスペースもあります。田中講師のオリジナルです。
「目標に対しての、実際の進捗状況を把握することが大切です。自分で考えながら時間を管理できるようになりましょう」
日頃のトレーニングの段階からメモをとることの重要性は、前回の講習で説明がありましたが、さっそく今回は実践です。
「今日は標準タイムの65%で走る予定です。このペースで行けば、ハセツネは17時間半でゴールできますよ」
10:20に登山口を出発。
ヨメトリ坂を登って、市道
(いちみち)山に着いたのは11:02。「ウォームアップお疲れさまでした」と山頂で田中講師が迎えてくれました。ウォームアップと呼ぶには相当に速く、標準タイムの半分というペース。「このペースで行けばハセツネ13時間半ですね」と笑顔の田中講師。
時間を計るだけでなく、標準タイムの○%という具体的な数値で表わすことで、なんとなく体でペースを覚えられるように感じられました。これくらいの息苦しさで行けばいいのかな......みたいな。
こうした地道な実践が、経験となって自分の体に蓄積されていくという意味では、記録を取るのと取らないのでは、雲泥の差が出ると思います。
さらに田中講師は「こうして細かい時間をメモしてみると、立ち止まっている時間がいかに長いか、いかに休憩に時間を費やしているかがわかりますね。どれくらい休んだら体力が回復するかとはわかりませんし」と、休憩に無駄に時間を費やさないことの大切さ指摘してくれました。
メモをとりながら真剣に聞き入る講習生のみなさん
市道山の先でハセツネのコースに合流すると、吊尾根
(つりおね)という尾根に出ます。ちょっとした岩場が出てきて、やや悪路になります。あまりスピードを出せないので、レースでは第二の渋滞ポイントにもなる場所です。ちなみにこの尾根上には水場がありますが、急斜面で危険なためあまりおすすめできません。コース上のおすすめ水場をまとめたウェブサイトもありますので、ぜひ参考にしてください。
B級アスリートの一日
新緑がまぶしい! 走るのにも最適な季節だ
醍醐丸(867m)付近で講習生の一人が足首を捻挫するハプニングがありましたが、今回の講習内容はテーピング! しかもテーピング講習講師の橋本利治氏がスイーパーとして最後尾を走っています。さっそく、即席のテーピング講習が始まりました。
講習生が取り囲むなか、山の中でリアルな講習が進む
テーピングできちんとした応急処置をして故障者が自力で下山するのと、誰かの手を借りなければ下山できないのでは、状況がまったく違ってきます。テーピング技術の重要性を再認識しました。
その後、連行峰(1010m)では、「田中流おしりストレッチ」を教わります。これは、スクワットをしながら、おしりの筋肉のストレッチも同時にできるというもの。
みんな真似してますが、ちょっと違う?
生藤山(990m)の先の三国山(三国峠)山頂には13:33に着きました。
参考までに、武蔵五日市駅からハセツネコースをたどってきて、醍醐丸からハセツネコースを外れてルートを陣馬山方面にとり、景信
(かげのぶ)山~城山~高尾山~京王線高尾山口駅まで走ると、ちょうど30kmくらいの距離になるそうです。練習コースとして覚えておくといいかもしれません。
三国山では東京都山岳連盟気象委員会の島津好男講師による「山岳気象講習」が行なわれました。
島津好男先生。ここまで登って、私たちを待っていてくれました
日本の天気予報の当たる確率は非常に高く、80%だそうです。トレイルランの前夜と当日の朝は必ず天気予報をチェックして、おおよその天気の変化を事前に確認しておきましょう。
天気予報がよく当たるのは冬型の気圧配置のときと、大きな低気圧、移動性高気圧が通るとき。逆に天気予報があまり当たらないのは梅雨時です。前線が微妙に動くことで天気が変わってしまうからです。そう言われてみると、梅雨時、雨の予報だったのに降らなかったという経験があると思います。
そして、山で怖いのはなんといっても雷。雷の音が聞こえるのは10km圏内とのこと。雷が鳴ったら、いつ落雷が起きてもおかしくないと思い、なるべく窪地のような低い場所へ移動して姿勢を低くしましょう。
標高が1000m上がると、気温は平均して6度下がります。さらに風によって体感温度も下がります。風速が毎秒1m増すごとに、体感温度は1~2度下がると覚えておいてください。仮に稜線などで風が強くて歩きにくいような場合、風速は10m以上になっています。となると、体感温度は風のない時と比べると10度以上違って感じられます。トレイルランで標高が高い地域に入るような場合は、こうした山の気象の特性も覚えておきたいものです。
そういえば、お昼ごろから降ると予想された雨ですが、けっきょく最後まで降りませんでした。田中講師は「いろんな天候を体験してほしかったんですけどねえ」と、ちょっと残念そうでした。
ハセツネ本番でもおなじみのマッサージ師も三国山に登場! 助かります
約30分間の気象講習の後、浅間
(せんげん)峠まで各自のペースで走りました。三国山から浅間峠まではいくつかの小ピークを越えますが、なだらかな尾根道が続き、気持ちよくトレイルランが楽しめる場所でもあります。
あずま屋のあるここ浅間峠は、ハセツネの第一関門になります。スタート地点の五日市中学校からの距離は22.66kmです。
本日の実走講習はここまで。今回は上川乗へ下山します。標準タイムで40分の下山道を、各自が本気で走って下る練習をしました。ちなみに私は13分で走りましたが、トップの人は7分だったそうです。
実走講習では、だいたいどれくらいのペースで走っているのか、今回の私の練習記録を表にしてみました(立ち止まって説明を聞く時間は除いてあります)。
| 地点 | 標準タイム | 実走時間 | ペース(標準タイムを基準とした場合)
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| 笹平 | | |
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| 市道山 | 1:30 | 0:42 | ×0.46
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| 醍醐丸 | 1:40 | 0:55 | ×0.55
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| 連行峰 | 1:10 | 0:25 | ×0.35
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| 三国峠 | 0:40 | 0:12 | ×0.30
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| 浅間峠 | 1:05 | 0:32 | ×0.49
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| 上川乗 | 0:40 | 0:13 | ×0.32
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| 合計 | 6:45 | 2:59 | 平均 ×0.41 |
実走講習のあとは会場に戻り、風呂に入って着替えたあと、16:30から橋本利治講師による「テーピング講習」が行なわれました。
もともとテーピングは患部を固定する目的で開発されたものですが、故障箇所に巻きつけることにより、東洋医学でいうツボが刺激されて効くとか、皮膚を浮かせることでリンパの流れがよくなるなどの効用があり、回復を早めることが期待できます。
トレイルランでもっとも気になる足首とヒザを中心に、ケガの予防と、捻挫した場合の処置を勉強しました。
用意するもの
・キネシオテープ 50mm幅
・非伸縮性テープ 50mm幅
・ハサミ
左がキネシオテープ、右が非伸縮性テーピングテープ。ドラッグストア等でどうぞ
キネシオテープは伸縮性があり、捻挫を予防したい場合に使います。これは、あまりにガチガチに固定してしまうと動きの自由度がなくなりすぎ、パフォーマンスを発揮できないからです。
一方の非伸縮性テーピングテープはほとんど伸びません。そのため、捻挫をした場合に、患部が動かないように完全に固定するのに向いています。
田中正人さんの場合、日帰りならば、救急用品は非伸縮性テーピングテープのみ、だそうです。これで、骨折や捻挫の固定、出血時の止血などにも使うのだそうです。
キネシオテープで足首のねんざ予防
1)幅50mm、長さ35cmのキネシオテープを3本用意する
2)1本目を、内側のくるぶしから踵を通し、まっすぐアキレス腱に沿って貼る
内側のくるぶしにテープを貼り......
足裏、外側のくるぶしへ回す
3)2本目は、1本目と少しずらして、同じように貼る
4)3本目も同じ場所からスタートして1本目と2本目の間に貼る
自分で貼ってみる(むずかしい)
他の人に貼ってもらう(このほうがやりやすい)
キネシオテープで膝の痛み予防
1)幅50mm、長さ35cmのキネシオテープを2本用意する
2)1本目の片側に15cmくらい縦に切り込みを入れる
3)切り込みのないほうをふともも付け根あたりから筋肉を伸ばした状態で貼り、切り込んだ部分でヒザを囲むように貼る
ヒザのお皿を左右から囲むように
4)2本目のキネシオは両側に13cmくらい縦に切り込みを入れる
5)ヒザの裏側にテープの真ん中をもってきて、今度は切り込んだ部分を横からヒザを囲むように両側から貼る
ヒザのお皿を上下から囲むように
固定テープで捻挫の処置
1)ふくらはぎの下に雨具などを置いて、その上に足を置く
2)足首を90度に保つ。処置する人がほかにいる場合は、ケガをした本人がつま先を回したテーピングを引っ張って足首の角度を維持する
3)足首少し上にアンカーを作る(2枚)。この時シワを作らないように注意
足首の輪がアンカー
4)スターアップ(体重15kgで1本を目安に)を3~4枚
5)ヒールロック(くるぶし外側から1枚とくるぶし内側から1枚)
6)フィギュアエイトを1枚(8の字を書くように)
7)つま先側にアンカーを1枚
8)そのアンカーを起点に、足首を通って1枚
写真が少なくてすみません。
テーピングの巻き方については、いろんなサイトに載っていますので参考にしてください。
また、実際に巻いて練習しておくことが大事です。
橋本講師が「捻挫したことのある人は?」とたずねたところ、ほぼ9割の人が手を上げました。それくらい捻挫の頻度は高いのです。自分のためだけでなく、仲間がケガした場合にも必ず役に立ちますから、即座に処置できるよう何度も練習しておきましょう。
次回、第3回の「ハセツネCUPトレイルラン安全走行講習会」は6月28日(土)です。
それでは次回もお楽しみに!
取材・文=田口裕子
写真=宮崎英樹(ASM編集部)