2007年1月 2日 投稿者: アドベンチャースポーツマガジン編集部

世界遺産であるオーストラリアのタスマニア。この地で開催されるアグレッシブかつ有意義なアドベンチャーレースがある。F1レーサーであるマーク・ウェバーがオーガナイザーを務めるチャリティーイベントとしても名高い「マーク・ウェバー・ピュア・タスマニア・チャレンジ」。日本ではまだ馴染みの少ない本レースだが、その模様をオーストラリア在住のフォト・ジャーナリスト近藤 学氏が写真と文章でお届けする。
「マーク・ウェバー・ピュア・タスマニア・チャレンジ」特別ルポ
第1回
Text & Photo by Kondo Manabu
文・写真☆近藤 学
【近藤 学 Manabu Kondo】
オーストラリア、タスマニア州、ホバート在住。
フリーランス・フォトグラファー。
東京では「週刊ゴング」を中心としたプロレス、格闘技の写真掲載。
オーストラリアではロイター通信、AP通信、The Australian、The Age、The Mercury、The Examinerに写真を掲載する
Manabu.kondo@bigpond.com
オーストラリア本土の南方海上に位置する島、タスマニア。
島全体の60%以上が国立公園や世界遺産に指定を受けた原生地域となっている。
面積は北海道の8割ほど。このコンパクトな島の中に荒々しくも美しい海、山、川が凝縮されている。さらに「一日に四季がある」といわれるほど変わりやすい天候はアドベンチャーレースの舞台として、まさに打ってつけだろう。
2003年、オーストラリアのF1レーサーであるマーク・ウェバーは、シーズン・オフ中の自己鍛錬と己の限界を試すため、アドベンチャーレースの地としてこの島を選んだ。
オーストラリアを代表するプロのスポーツ選手や仲間を集めアドベンチャーレースを企画するが、このイベントを病気に苦しむ子供たちや、その家族を支えるためのチャリティーの一環として行なうことで、さらに多くの人々や企業の賛同を得た。
これが「マーク・ウェバー・ピュア・タスマニア・チャレンジ」のはじまりだった。
レースへの参加を希望するアスリートたちがスポンサーとなってくれる企業を探し、もしくはスポンサーとして参加したい企業や団体がアスリートを募集し、定員である12チームが決まる。2006年度の大会は、11月5日から11月10日にわたり開催された。
参加選手およびこの大会を取材するメディアが各国から集まり、活気に満ちた大会となった。またチャリティーとしても成功を収めた。この大会を終えた時点で約40万オーストラリア・ドル(約3,600万円)を集めることができた。
本連載では、大会前日から終了までの6日間の様子を伝える。
「マーク・ウェバー・ピュア・タスマニア・チャレンジ」のオフィシャル・サイトは英語版で
http://www.markwebberchallenge.com
参加要領等の詳しい内容を確認できる。
大会前日 11月4日(土)
参加者、関係者、メディア全体のプリーフィング。
大会全コース発表。
ユニフォームその他の装備支給
各チームの準備、調整。

↑大会前日のブリーフィング。12チームすべてが集合。このとき初めてコースの内容が知らされる。難しい質問から冗談まで飛び交い、すぐにみなが打ち解けた
Day One 11月5日(日) --- ロンセストンからライアウィーニーへ
ロンセストン・アーバン・チャレンジ(35km)
レグ#1ラン(3km)
カヤック(7km)
ラン(7km)
ミステリー・レグ(2km)
マウンテンバイク(10km)
ランチ
13:00
レグ#2マウンテンバイク(37km)
15:00
レグ#3マウンテンバイク(56km)ブラックネル → ライアウィーニー
第1レグのロンセストン・アーバン・チャレンジは、スタート直後から混迷した。地図の読み違い、役割分担が明確でないチーム、身体は先に進みたがっているが行くべき方向が明確でないという様子だ。しかし、この問題は時間とともに解決した。午後にはすべてのチームが安定した一体感を見せていた。内容を知らされていないミステリー・レグ2kmでは、いったい何が待ち受けているのだろう、と心配していた選手もいたが、答えはスクーターだった。クールでハンサムなF1ドライバー、マーク・ウェバーが真面目な顔をしてスクーターを走らせる姿に観客からは笑いがあふれたが、このスクーター、見かけ以上にきついらしい。
初日のハイライトはこの日の最終レグであるブラックネルからライアウィーニーへのマウンテンバイクだった。
林道を56km。「タスマニアは一日に四季がある」と言われていることなど、多くの選手は知らない。昼間の陽気とはうって変わって、夕方からの山間は凍えるほど気温が下がる。おまけに肌を刺す冷たい雨も降り始めた。かなり急勾配な上り坂が延々と続き、強い向かい風が選手たちの体力と体温を奪い、うめき声を誘う。
後に6日間の全行程を振り返って、どのコースがいちばんキツかったかと尋ねると、ほとんどの選手がこの初日の林道56kmだ、と答えた。タイヤがパンクし、チェーンが切れ、寒さのため手の感覚が無くなりブレーキングのタイミングが遅れる。このレグのハードさを象徴する出来事は、オーストラリア・オリンピック・サイクリストのシェーン・ケリーが、このレグで何度も太腿の筋肉のつりに悩まされたことだろう。
「まさかね、バイクのレグでこんな問題が起こるとは思わなかったよ。冗談じゃない、一体誰があんなにキツいコースを選んだの?」
この日、完走など不可能では? という思いが多くの選手の脳裏を横切ったはず。それだけに、ずいぶん前に太陽が沈み真っ暗になったキャンプ場にゴールした選手たちの表情は、みな感無量といった趣だった。
しかし喜びもつかの間、彼らはすぐにぬれた衣服を着替え、乾かし、自分たちでこの日の夕食を作り、明日のコースの確認や戦略を練らなければいけない。モタモタしているとエネルギーを蓄え、体力をとり戻すチャンスを失ってしまう。

↑上=いよいよスタートだ。中=この時点では、チームメイトの間にまだ距離がある。下=さっそくコースからはずれ、近道を探し出すチームが出始めた
↑「楽しそうだって? そりゃ、レースじゃなければね!」
↑最終レグのマウンテンバイク56km。タスマニアならではの牧歌的風景の中、みな出足は好調だった。この後、地獄が待ち受けているとは誰も思わなかったはず・・・・・・
↑前に進むにしたがい、山並みがどんどん深くなり、ペダルも重くなったいく。予備のチューブを使って、遅れをとるチームメイトを牽引する
↑イギリス漕艇界のスーパースター、オリンピック・ゴールドメダリストのジェームス・クラックネル(写真上)、そしてオーストラリアF-1レーサーのマーク・ウェバーもあえぎ声を上げ始めた
↑タイヤがパンクし、チェーンが切れる選手も
↑登り坂はさらにキツクなるばかり。気温がどんどん下がり、雨も激しさを増した。選手たちは体力が失われていくのを感じた
↑オリンピック・サイクリストであるシェーン・ケリーの足が何度もつってしまい、その都度チームメイトたちがマッサージする
↑登り坂ではチームメイトがシェーンの身体を両側から押し、心身ともに彼を支える。決してチームメイトを置いてきぼりにはしない
↑1日目の最終レグにゴールした選手の表情はさまざまだ。喜びの声、憔悴した顔、泣き出す者・・・・・・。オーストラリアン・アイアンマン・チャンピオンのガイ・アンドリューズですらご覧のとおりだ
第2回へと続く……。お楽しみに!
It will continue next time.