
「走ることなんて嫌いだった……」という沢野有希さん。アナウンサーという別世界で生活していた彼女が、突然、国内最高峰のトレイルランニング・レース「日本山岳耐久レース(長谷川恒男CUP)」への挑戦を決意する。さて、この先、彼女はどうなるのか!
ひょうんなことから出逢ってしまったトレイルランニング。これまでアナウンサーとして活動してきた彼女とはまったくもって無縁の世界。にもかかわらず、トレイルランニングの世界にグーンと惹きこまれていく。そしてついには無謀(!?)ともいえる計画を立てた! 「日本山岳耐久レース(長谷川恒男CUP)」初出場初完走。
果たして彼女の意気込みどおり、夢はかなうのか、それとも……。以下、彼女の挑戦のプロセス第2回目をお届けしよう。
なお、連載第1回は、以下をご覧下さい。
http://www.adventure-sports-web.com/blog/archives/2006/07/1_1.html#more
<プロフィール>
沢野有希(さわのゆき)
bayfm情報アナウンサー、パーソナリティ、エッセイスト
趣味は、トレイルランニング、ウォーキング、温泉&銭湯巡り、ドライブ、旅行、フランス語、写真 etc.
公式サイト http://www.sawanoyuki.com
2006年4月に、ハセツネ完走への道をつづったブログ
「アナウンサー沢野有希のハセツネ完走への道〜♪」をオープン
http://yukiss.cocolog-nifty.com

WEB連載 第2回
「初の本格的トレイルランニングレース
第8回北丹沢12時間山岳耐久レースに挑戦♪」
*「北丹沢12時間山岳耐久レース」
「日本山岳耐久レース」「富士登山競争」と並び、トレイルランニング国内3大レースのひとつ。北丹沢山域の43.86kmを制限時間12時間のもと、走り抜く。高低差1,140メートルのコースは、アップダウンのタームが長く、いっきに登り、そしていっきに下るといったイメージ。各関門の制限時間も厳しい設定で、距離は短いものの、ある意味「ハセツネ」よりもハードなレースである。
http://www.tanzawa-green.co.jp/html/race/index.html
<2006年7月2日、レース当日>
朝5時前に、スタート地点・緑の休暇村そばの
青根キャンプ場のバンガローで起床し、準備開始。
朝食用にと取り寄せた、鶴屋旅館のおにぎりを口に運ぶものの
普段、朝食を食べない習慣からか、前日ビールを飲み過ぎたのか
思いのほか食欲がなく、1個でおなかいっぱいになってしまう。
リアクターのザックに、アウターのトップスや、行動食を入れ
ボディに、スプレーをしたり、日焼け止めを塗ったりなどしていたら
あっという間に6時が過ぎていた。
7時のレース開始には、まだ時間ありと思っていたものの
刻々とスタート時間が迫ってくる。
荷物の預けを、いっしょにバンガローに泊まった、じゅんにお願いし
バンガローのチェックアウトを済ませにいくと
既にたくさんのひとが、スタート地点についていた。
レース開始10分前ぐらいにスタート地点へ。
応援に来てくれたクラブメンバーのえのちゃんからの
「ゆっきー、ペースを上げすぎないように!」アドバイスを胸にきざみ
たくさんの出場者と一緒に、いまかいまかとスタートを待った。
<レース開始>
7時、スタート。
試走のとき、Sさんから
「トレイルに入るまでは、辛くってもしんどくっても
歩かないで、ゆっくりでいいので走ってください」の
コトバを思い出し、ジョギングで、なだらかな上り坂を走っていきました。
トレイル入口に着いて
その「ジョギングして」のアドバイスの意味を痛感。
ひとり走るのがやっとのトレイルの手前は、大渋滞で
その場で、15分足止めをくらうことになったからです。
大渋滞中に、取材中のアドスポY氏を発見。
「沢野さ〜ん! がんばってくださいね〜!」の声に
余裕(!?)を思わせる笑顔で応え、いざ! トレイルへ。

試走のときは、ナビのペースについていこうと必死だったものの
前も後ろも数珠つなぎなので、ゆっくりゆっくりのペース。
「これなら最後まで行けるかも?」と思いましたが
レースは、43.86km。
そんな甘い気持ちでは太刀打ちできるものではありませんでした。
<はじめての体験>
スタートから2時間ほど経ち
キツいと聞いていたのぼりを必死の思いで登ってるとき
ふくらはぎがつってしまいました。
スポーツ経験の少ないわたしには、初めての体験。
どうしたらいいのか分からず、すぐ後ろのひとに教えてもらおうかと思って
声をかけると、ヘッドフォンをしていて声が届かず。
ふくらはぎをのばし、のばし、なだめつつ、急勾配をのぼっていきました。
塩あめを口に入れ、登る、登る。
なかなかふくらはぎの痛みが取れずで、リタイアを考えはじめました。
でも、ここで終わりにするにしても、下るか、第1関門まではいかなくてはなりません。
とりあえず、第1関門まで行こう! と心に決めたら、少し元気が出てきました。
この頃になると、トレイルの脇で、必死の形相で休むひとや、補給をするひとが
見られるようになってきました。
わたしも休もうかな、との思いがちらっとかすめたものの
「休んだら、たぶん動けなくなる!」と思い
休んでも1、2分ぐらいで、またトレイルへと足を踏み出していきました。
やっとの思いでのぼっていると、40代とおぼしき、ひとりのおじさまが声をかけてきました。
そのかたも、北丹沢初出場とか。
話しつつ登っていたら、また少しに元気がでていました。
このおじさま、ものすごく速いというわけでもないのに
気づくと、前を行っていて、あ、姿が見えないな、と思うと
キリのいいところでさりげなく待っていてくださいます。
そのかたのおかげで、なんとか15km地点付近まで到着。
大会スタッフに
「第1関門まで、あと3kmです。ここからは下りですよ」と声をかけられ
おじさまに、前を譲ると
「ペースメーカーになってもらえると助かります」とのことで
わたしが前を走ることになりました。
気持ちのよいくだりを、軽快にくだっていきます。
少し前を走る女性と、ちょうどいい距離を保ちながら、の下りのトレイル。
あと3kmなら、制限時間内に第1関門の通過は確実。
第2関門まで行けるかもしれない。
そんな、前向きな思いが、こころを占めはじめました。
しかし、またしても、そんな思いは長くは続きませんでした。
ひざが笑うようになってしまい、思うように足が前に出なくなりました。
おじさまに先を譲り、スピードを落とし
走るというより、歩くに近いスピードで、トレイルを進んでいきました。
親切なおじさまとはここでお別れ。
後ろから猛スピードで降りてくるランナーに道を譲り
休み休みのくだりとなりました。
少し前から落ちてきていた雨つぶが
どんどん大きくなっていきます。
ふくらはぎのつりも、時をおなじくして起こり
頭のなかに、またしてもリタイアのコトバが浮かんできました。
時計を見ると、第1関門の締め切りまで、30分を切っています。
あと何kmなのか、どのくらい走ってきたのか
激しさを増す雨で、テンションも思考回路も下がり
関門通過をあきらめつつ、とりあえず、第1関門を目指しました。
ひとの姿が見え、第1関門が見えたとき
どこにそんな元気があったのか、というほど、足が動くようになりました。
試走の時に寄った、水場の前を通り
エイドステーションで、給水とバナナをいただき、第1関門通過。
時間は、11時23分でした。
<雨降りしきる>
第2関門の締め切りは、13時ジャスト。
登山のひとで、行程3時間といわれるところを
1時間37分以内で行ければ、間に合います。
北丹沢は、第1、第2関門をクリアすれば、完走できるといわれている大会。
頭のなかで計算しつつ、押し問答しつつ
大雨で、川のように水が流れるのぼりのトレイルを、1歩1歩歩いていきます。
雨で、靴のなかはぐっちゃぐちゃ。
途中から着たフーディニ(ソフトシェル)は、防水効果がなく、ずぶぬれ。
スペクタージャケット(ハードシェル)をザックに入れてこなかったことを後悔しました。
冷えもあって、またふくらはぎがつり始めました。
昨年も参加されているという、60代のおばさまに聞いたところ
どう考えても、このスピードでは第2関門までは間に合わないとのこと。
「足切り覚悟で第2関門まで行きますか!」という話をし、また歩きだしました。
しかし、気持ちが負けてきてしまって、足を出すスピードが落ちていきます。
気づけば、おばさまの姿が、遠くなり、見えなくなりました。
<決断>
トレイル脇の標識にもたれかかり、行く? リタイアする? と、数分自問自答。
「ごめんなさい」と心のなかでおばさまに謝り
11時49分リタイアを決めました。
トレイルを下り、第一関門で、送迎用のバスに乗りゴール会場へ到着。
ゴール付近で取材中の、アドスポY氏に、リタイアを報告しました。
こうして、わたしの初北丹沢12時間山岳耐久レースのチャレンジが終了しました。
<レースを終えて>
思いのほか、くやしい! という思いはありませんでした。
北丹沢時点での、自分の体力&気力を知ることができたこと。
今後の課題が見えてきたこと。
わたしの目標は、「ハセツネを完走」すること、だから、です。
そういう意味で、とてもいい経験をすることができました。
「百聞は一見にしかず」。
ハセツネ3ヶ月前に本格的なレースに出場したことで
自分の体力&気力の力不足を知ることができたし
これから約3ヶ月、なにをしていけばいいのかが
見えたことは、いい自信にもつながりました。
充分な試走と、しっかりとした筋力&走力をつければ
ハセツネの完走はできる! という自信にもなりました。
【沢野有希のハッピースパイラル♪ インフォメーション】
7/30(日)まで、横浜の都心臨海部で開催されている
アートの回遊型イベント「ヨコハマEIZONE(エイゾーン)」。
http://www.y-eizone.jp
このイベント情報をご紹介する、インターネット放送局
「ヨコハマEIZONE STATION」に出演します。(*7/27(木)除く)
http://portside-station.net
アナウンサーとは違う「素」に近い沢野有希に会いにきてくださいね♪
【From ASM編集部】
連載第2回、みなさんいかがでしたでしょうか? 本格的なレースへの初挑戦は、残念ながらリタイアに終わってしまいましだが、彼女の決意は微塵も揺るいでいません! ぜひご意見ご感想、沢野有希さんへの応援等、本コーナー「コメント」欄または、adventure@yamakei.co.jp
まで、お寄せください。みなさんの応援が沢野さんの必ず後押しするはずです!
なお、「ハセツネ」終了後の最終回は、次号『アドベンチャースポーツマガジン』にて紹介する予定です。お楽しみに!
この記事へのコメント (1件)
投稿者: 常盤 直美 | 2006年8月 9日 00:55
48歳男性です。今回始めて参加しました。文字通り耐久レースだと実感しました。第1関門を3時間30分くらいで通過し第2関門を5時間30分くらいで通過ゴールは9時間21分くらいでした。途中の豪雨ぬかるみの最後の山越えと過酷でした。参加者は山岳経験者が多いらしくノルディックストックを持参していました。また下りのスピードが私とは比べ物にならないほど早いのに圧倒されました。ウルトラの経験のある私でも本当にタフなコースでした。ただ言えることは、自分にあったペースを設定することレース前に疲労を抜くこと自分の体調をしっかり把握し、レース天候に合わせた服装、適切な所持品を持つことが鍵のような気がします。記録だけを気にせず、気力の充実を大切にしたいものです。ゴールまでを(リタイヤ経験も含め)苦労すればするほど感動も人一倍です。ゴールで待つ妻を素直に抱きしめられるのも普段得られない経験のひとつと思っています。