2005年11月22日 投稿者: アドベンチャースポーツマガジン編集部

日本代表チーム「イーストウインド」がアドベンチャーレースの世界選手権に出場した。メンバーは、田中正人、横山峰弘、駒井研二、佐藤浩巳の4選手。日本のトップレーサーによるドリームチームの軌跡を現地ニュージーランドよりお届けする。
去る11月14日に始まったアドベンチャーレースの世界選手権「アドベンチャーレーシング・ワールドチャンピオンシップ」。ニュージーランドを舞台とする「サザントラヴァース」が本年度の世界選手権となり、例年以上に過酷なレースの火蓋がきられた。日本からは国内第1人者田中正人率いるチーム「イーストウインド」が参戦。天候、地形、レギュレーション、コースなどなど、すべての要素で予想を上回る厳しいレースが展開された。参戦したのは世界の強豪46チーム。日本の誇るドリームチーム「イーストウインド」ははたしてどういったレースをしていったのか。以下、チームをマネージメントする竹内靖恵氏による現地レポートを紹介する。

左=地元紙の一面を飾ったチーム「イーストウインド」。バウ横山峰弘選手、スターン田中正人選手。狂ったように荒れた海が、大会のレベルの高さを物語る
11月14日(月)ステージ1〜2
「アドベンチャーレーシング・ワールドチャンピオンシップ」2005が開幕した。スタート時刻は11月14日(月)9時30分。雨が激しい。
第1ステージは町中のラン2km。アスファルトを猛ダッシュする。ここではあまり差が出ない。
第2ステージはシーカヤック26km。とにかく波が荒い。日本であれば絶対に開催しない程荒れている。ここで佐藤と駒井の艇が沈(転覆)。佐藤はパドルを流出していまう。ゆえに、荒れ狂う海を泳いで岸までたどり着いてTA1へ。他の選手もかなり苦戦。
スタート→TA1
1位:Balance Vector 到着時間 11月14日 10時45分
23位:Team EAST WIND 到着時刻 11月14日 11時22分
11月14日(月)ステージ3
6〜7艇のカヤックをも壊してしまうほどの狂乱の海原をなんとか終え、第3ステージMTBに入った。距離は49km。ナビゲーションが難しくない代わりに、スピードが強要される。またしても田中の足にダメージが来た。これを駒井が引っ張る。そして23位をキープしたままこのセクションを終える(15時58分着)。1位はそのまま「Balance Vector」(14時26分着)。次位をグンと離している。
MTBを終え、「MTBのコースはかなるテクニカルで難しい」と横山。「ミスはなかった。もっといけた」と駒井。「MTBはスピードレースだった。ここからが本番だ」とトレッキングのナビゲーションに意欲を見せる田中。「山岳セクションは1日かかる。絶対に捻挫は避けたい」と佐藤がしっかりとテーピングをする。
次のTA(トランジッション・エリア)は11月15日19時30分が関門時間となる。ここまでに到着しなければカテゴリーが別となる。ここで巻き返しをはかりたいところだ。
11月15日(火)ステージ4
ステージ4は強豪チームが続々と遭難をしている37kmのサザンアルプス・トレッキング。ここでほとんどの選手が夜を迎える。サザンアルプスは薮だらけ、しかも雨が降り続く。視界も殆んど効かない。しかし今夜は暖かいのが救いである。
次のセクションはCP6〜8の3ポイントを通過する。CP8は無人トランジッションエリア(TA4)で、ラフティングに入れかわる。このラフティングで11月15日の19時30分までに出発しなければチームはカットオフ(ランク外)となってしまう。
CP8をNo.23「Balance Vector」が11月15日(火)8時27分に抜けた。しかしその後1チームの姿もない。2位のチームがCP8に到着したのはなんと4時間後の12時30分である。
優勝候補と言われているイアン・アダムソン率いる「Nike Balance Bar」もトップよりかなり遅れている(現時点で4位)。
17時、18時……「イーストウインド」の姿はない。そして19時00分。この時点ですでに26チームは通過。しかしまだ「イーストウインド」は見えない。「無理か!?」と思った瞬間、チーム「イーストウインド」が走ってCP8に駆け込んだ。到着は19時20分。しかし、関門を通過するためには、19時30分までにラフティングを出発しなければならない。あと10分しかなかった。「イーストウインド」はとにもかくにも急いでラフティングの準備に取り掛かる。ラフティングガイド(カッパクラブ所属)でもある田中、横山、駒井は慣れた手つきで準備をする。そして川へ!
19時29分21秒。チーム「イーストウインド」関門時間39秒前にみごとに通過。そして次はまた魔のマウントトレックが待ち受ける。
11月15日 TA(装備入れ替え)
関門のセクションを19時29分21秒に抜けた「イーストウインド」。ここは彼らの得意とする種目ラフティング。しかし瀬はそれほど激しくもなく、難なくクリア。そしてサポーターたちの待つTAに到着(11月15日22時ごろ)。ここでしばしの休息。サポーター(北村、須藤、内田)が細やかに動いて選手をサポートする。食事、サプリメント、マッサージ、そして現在の情報……。が、ゆっくりもしていられない。次の関門(CP27/TA9)の関門時間は11月18日14時30分。その関門にかからないように戦略をしっかり練らなければならない。イーストウインドはここで2時間の仮眠を取る事に決めた。
※選手の食事
尾西食品アルファ米。サポーターがおにぎりにして選手も持たせたり、その場で汁物に入れて食べ易いようにしている。美味しいので選手にとっては嬉しい日本食だ。
※選手のサプリメント
MUSASHI「NI(ニー)」。6日間の長期レースには欠かせないサプリメント。筋肉疲労を素早く回復してくれる。

11月16日(水)ステージ6
ステージ6は30kmのマウンテントレック(CP11〜14)。薮に泣かされる相当過酷なコースである。予想通過時間はトップチームで16時間、ラストチームで22時間である。チーム「イーストウインド」は2時00分に出発。真夜中のサザンアルプスに消えていった。
そしてトップチーム「Balance Vector」がこのセクションを終えたのは23時間近くかかった11月16日8時27分。トップチームですらこれほどかかった。
優勝候補といわれるイアン・アダムソン率いる「Nike Balance Bar」はトップより10時間遅れの11月16日18時00分に3位でCP14に到着。この分だと現在27位の「イーストウインド」もかなり時間がかかると見える。「イーストウインド」がCP12に到着したのは11月16日9時:53分。出発時刻は10時10分。しかし12時00分に再度CP12に戻ってきてしまった。その後詳しい情報はなし。
11月16日(水)17時30分ごろ
緊急事態が発生した。
主催者によるとチーム「イーストウインド」がリタイヤを表明したらしい。車がアプローチできるところまでサポーターが選手を迎えに行くように指示があった。その地点に行ってみるとすでに4〜5チームがリタイヤで下山していた。過酷さを物語る。
だが下山したチームが「イーストウインドはレースを続けている。彼らは元気だ」と言う。ともかく状況がつかめない。
*編集部より
この段階で、トップチームですら完走が危ぶまれる状況に。オーガナイザーは急遽コース後半を短縮する。そんな中、「イーストウインド」は、リタイヤを決断。チームキャプテン田中正人氏からのコメントを以下、掲載。
「ステージ5、トレッキングのCP12〜13への移動はかなり厳しいものがありました。雨風が極めて激しく、気温はマイナス1度。この夜、サザンアルプスはみぞれが降りました。この区間は森林限界を越えた稜線の縦走でした。レインウェアは着ていたのですが、防水シューズではなかったので、足元から水が入り、タイツが水を吸って、下半身全体が濡れている状態になってしまいました。そうしているうちに体温がどんどん奪われ、どれだけ一生懸命動いても体温を維持できない状態でした。
CP12の手前で岩場に取り付いている時に体の震えが始まり、低体温症の前兆が現れました。さらに症状はひどくなる一方で、CP12(小屋)にどうにか逃げ込んだ状態でした。その時はすでに下半身が芯から冷え込み、震えも止まりませんでした。さらにその時に持っていた装備でこの天候なかを先に進むことが困難であると判断。この時点で夕方。天候は夜になるに連れてさらに悪化するということでした。CP12でビバーク(野営)をして翌日CP13に進むということも考えましたが、ビバーク装備は競技
ルールを満たすためだけの軽装で、実際にこうした極限下でビバークするにはあまりにも簡易ですでに兆候のある低体温症を回復させるにはあまりにも不十分でした。しかも食料は予定外の1晩を多く過ごすには不十分でした。
チームで1時間半ほどの話合いの中でCP13に進む可能性を検討をしました。しかし、ここで無理をして進み、自分の命を守りきれるか、主催者に迷惑をかけるのではないかなどと言う意見があり、最終的に下山を決定しました。
また、これまでのペースでは次の関門時間(11月18日14時30分)に掛かってしまうのは明白であり、であれば、ここで下山をしてランク外になり、ランク外になっても頑張ってレースを続けようということになりました。
ランク外で継続をしようと下山したのですが、じつはこれが失格になるということが判明したのは、下山後でした。すぐに「引き返す」と主催者に訴えたのですが、主催者には認められませんでした。
こうしてチーム『イーストウインド』は失格となってしまいました。『イーストウインド』と同様、CP12で下山したチームも多数ありました。
今回のレースは想像以上に厳しく、現在レースを続行しているのは46チーム中11チームのみです。主催者も完全完走できるチームがないのではと懸念し、レース中に終盤コースを短くしたほどです。昨年の『サザン・トラヴァース』で優勝したチーム『カトマンズ』やフランスの名門チーム『インタースポーツ』も残念ながらリタイヤをしてしまいました。
ともかく今までに経験したことのない難度の高いレースでした。これが世界一を決定するレースなんだと勉強をさせてもらました。
応援して下さった皆様には本当に申し訳ない気持ちで一杯です。
しかし、この経験を活かしてさらに頑張っていきたいと思います。
皆様、本当に応援をありがとうございました」
(以上、田中正人談)
(Reported by Takeuchi Sue)
「イーストウインド」の闘いは終わった。だが、その健闘に心から拍手を送りたい。
* レースの詳細は、次号『アドベンチャースポーツマガジン』2006にて紹介予定です。ぜひ、ご覧頂ください。
【暫定リザルト】(*主催者発表上位10チーム)
1位 Balance Vector
2位 Nike Balance Bar
3位 GoLite Timberland
4位 Port Nelson
5位 Halti
6位 Merrell Wigwam Adventures
7位 Cross Sportswear
8位 Sierra International
9位 Norsewear
10位 Powered by Velvet.org.nz
●AR WORLD CHAMPIONSHIP
http://www.arworldchampionship.com/home.asp